俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜
結婚してこんな人間らしい息子が見れるとは、と内心父として嬉しく思っていた。
やたら嫁に過保護な感じは否めないが、
子供の頃から感情を表に出す事が少なかった翔が、妻の事になると、やたらムキに感情を露わにするのが嬉しいと思う。
先日は思わぬ所で親子のサシ飲みとなったが、やたらと父親に向かってズバズバと言って来た翔を思い出す。
今思うと酔っていたのだろうが…。
正論を叩きつけられて、意外と同じ経営者として、侮れないなと思うところを感じ、自分の息子ながら凛々しく、頼もしくも思った。
そして妻に関してはやたらと過保護で守りが硬い。
飲みの席で、『子供はまだ考えてないのか?』と、こっちとしては軽い気持ちで言っただけに過ぎなかったのに、
『だから、実家に連れて行きたくないんだ。』と翔は言った。
『特に身内から、子供はまだか?って言われると果穂がプレッシャーに思うだろ。
絶対言わないでくれ。』
そういうものかと、父として素直に気持ちを改める事が出来た。
『貴方は、もっと周りの意見を聞くべきだ。時代にあったニーズを若い世代から取り入れ無ければ、貴方の会社は衰退を辿る。』
翔からそう、ズバリと指摘され目が覚める思いがした。
今まで他人の言葉に聞く耳も持たず、
ワンマンな経営をしてきた手前、
凝り固まった意地のような物が邪魔をして、
なかなか新しい意見を取り入れる事が出来なかった自分を、翔の一言で、綺麗さっぱり消し去られた気がした。
息子が父を超えたと言う、確かな瞬間だったのかも知れない。
そんな息子と和解するきっかけを作ってくれた果穂の事は、父としても、気になって仕方がない存在になっていた。