ソファーときんぴらごぼう


「…はぁ」

あれから2日。

どうにか臨時で不動産の人に借りてもらったトランクルームに被害を免れた荷物を移した。

できるだけ早めにしないと工事も始まらないし。

今は夏海の家にいるけど、向こうには向こうの生活があるわけだし。私がいると彼氏さんも泊まりにこれないわけだし。

いつまでも甘えちゃ行けないのはわかっているんだけど…。

ため息しかでない。

木曜日にこうなってしまったから、金曜日お休みをもらって一人で移動できるものをやって
今日は夏海と彼氏さんも手伝ってくれた。

捨てる家具とかももちろんあった。
 
今回はこちらに非がないのと、保険が適用になるのがありがたい。
 
捨てるのは向こうで廃棄してくれるそうなのでお願いすることにした。

気分転換も必要でしょ、と夏海に誘われ、夜はご飯を食べに行くことになった。



「んで?実家も無理、ウィークリーマンションを借りるにしても微妙?どーすんの?」

居酒屋でご飯を食べつつ、飲みつつ、グサッとくる夏海の言葉。 

実家は県外、指定されたウィークリーマンションはどうにも遠いのだ。

ぎゅうぎゅうの通勤ラッシュは耐えられない距離。ほんとに苦手。

どうしたものかと頭を抱えていると、

「あ、ちょっとごめん」

夏海が電話で席を外した。  

こんなことになるなんて一週間前の私じゃ考えられなかった。
なんで私だけ…。

お酒が入って余計に悲劇のヒロインみたいな気持ちになってしまう。
ほんとに悲しい…。  

涙目で下を向いていたら。

「どうしたのおねーさん!
そんな悲しそうにして!」

悲劇のヒロインどこへやら。
酔っぱらいのお兄さんたちに絡まれた。

「いや、結構です。連れまってるだけなんで」

ほんとにめんどくさい。秒で涙引っ込んだわ。
あなたたちに絡まれたいわけじゃないのに。

「えー?そんなに冷たいこと言わないでさー!」

いちいち声がでかい!ほんとにやめてくれ!

「ねーねーちょっとー!」

ぽん、お兄さんの手が私の肩に触れて鳥肌がたった瞬間

「ーった!」

すぐ手がどかされた。

「酔っぱらいが女の子に無理に触るのは感心なりませんね。今のうちに退散しておいた方が無難だと思いますよ」

いきなり現れた男の人に腕を払いのけられたお兄さんたちは、その圧力にびびったようで、あっという間にいなくなった。

「…大丈夫ですか」

呆然としていたところに声をかけられて、我に返った。  

「す、すいません…ありがとうございました…!」

見ず知らずの人に助けてもらって…ほんとに申し訳な「大丈夫だった?!」  

夏海が後ろからひょっこり顔を出した。

「あ、うん。なんか、びっくり、しちゃった。」

どういう顔をしていいかわからず、しどろもどろになる。

「よかったー、何かある前で。大活躍じゃん!」

夏海が男の人をこづく。

夏海よ、誰なんだい、この人。

「誰ですかって顔に書いてるよ。初対面で困ってるじゃん」

逆に夏海をこづき返している。

「あ!そうだね!」

実際友達がナンパされるとか見たことないからさー、ついつい興奮するよねーと笑う夏海。

「私の先輩!」

話を聞けば高校時代の先輩で、相馬和真さんと言うそうだ。

お互い軽く自己紹介したところで、そのまま一緒にご飯を食べることになった。

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