白衣の王子たち

病室に夕日が差し込み始めたころ、

晴人はそろそろ帰ろうかなと腰を上げた。

他愛もないおしゃべりをしながら、

晴人を見送るためにエントランスに向かう。

「またご飯でも行けたら嬉しいなと

思ってるんだけど、、、

もちろん、2人きりだとダメだと思うから

また近所のやつとかと一緒にさ。

退院したら、誘っていい?」

無垢な目で、問いかけられる。

“退院したら”

そのワードが自分の中になかったことに

気づいてしまった。

普通の人は、入院したら退院があるというのが

当たり前。

そうだよね。

でも、正直、おうちに帰れる未来が、

今は見えなくて。

「ごめん、嫌だった?」

はっと気づいた時には、

心配そうな晴人に顔を覗き込まれていた。

「ううん!行きたい!

わたしもまた集まりたいって思ってた。」

「ならよかった。

また連絡するね。」

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