病める時も、健やかなる時も、君と
「きゃあっ!?」

ブチッと音を立てて下駄の鼻緒が切れてしまったのだ。これではまともに歩くことができない。

「どうしよう……」

裸足で歩くこともできず、絵梨花は近くにある神社の階段に座り込んでしまった。連絡手段もなく、鼻緒も切れ、つい先程まで楽しいという感情で満たされていた心は悲しみに染まっていく。その時だった。

「あの、大丈夫ですか?」

声をかけられ、俯いていた絵梨花は顔を上げる。そこには黒い甚平を着た夏樹が心配そうな顔で立っていた。

「えっと、その……」

突然知らない男性に声をかけられ、絵梨花は戸惑う。だが、夏樹は絵梨花の足元を見ると、「ああ……」と呟き、かばんの中から手拭いを取り出す。しば犬の柄の可愛らしい手拭いだった。それを躊躇うことなく夏樹は破く。そして、破いた手拭いを絵梨花の履いている下駄の鼻緒に通し、後ろで縛ってくれた。

「簡単な応急処置なので長くは持ちませんけど、何もしないよりかはマシかなと思ったので」
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