病める時も、健やかなる時も、君と
ニコリと夏樹が笑う。その笑顔に絵梨花の胸が温かくなり、高鳴る。だがすぐにハッと我に返り、謝った。

「ご迷惑をかけてすみません!あの、手拭いは弁償させてください!」

「別にいいですよ、そんなの。安物ですし」

夏樹はヒラヒラと手を振りながら笑い、スマホの充電が切れてしまった絵梨花にスマホも貸してくれた。そのおかげで絵梨花は友達と連絡を取ることができたのだ。

どうしてもお礼をさせてほしい、そう強く絵梨花は言い一緒に食事に行った。そして何度か会ううちにいつの間にか交際が始まり、出会って一年後には同棲するようになっていた。

夏樹との毎日は、穏やかで優しい生活だった。家事も分担し、休みの日はどこかへ出かけ、色んな場所で思い出を作って写真を撮った。

絵梨花が乳がんを発症して入院した際も、嫌な顔ひとつせずにお見舞いに来てくれた。二十代でがんになったことに落ち込む絵梨花に寄り添い、面白い動画や癒される動画を見せてくれた。それに何度も絵梨花は救われてきた。
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