病める時も、健やかなる時も、君と

「ちょっと、それ彼氏いない私への自慢？」

「えへへ。あっ、絵梨花さん！聞いてくださいよ〜！」

高校生の女の子が絵梨花に近付き、付き合い始めたばかりだという彼氏の馴れ初めから夏祭りの話を言う。それに相槌を打ちながら、絵梨花の頭に地元の夏祭りも同じ時期に開催されるということが思い出された。それと同時に、思い出さないようにしていた夏樹の顔が浮かぶ。

（きっと、夏樹さんは新しい恋人か奥さんと夏祭りに行ってるはず）

自分で選んだ道だというのに、胸がギュッと苦しくなる。無理に笑顔を作り、絵梨花は話を聞いていた。

数時間後、雑貨屋の閉店時間になり、絵梨花は店長と戸締まりを一緒にする。そして雑貨屋のエプロンを脱いだ後、店長に「お先に失礼します、お疲れ様です」と声をかけて絵梨花は雑貨屋を出た。その時である。

「ーーー絵梨花さん！」

懐かしい声がした刹那、手を強く掴まれる。驚いて振り向けば、そこには夏樹が立っていた。汗を浮かべ、息を荒くしながらも、真っ直ぐ絵梨花を見つめている。絵梨花の目が大きく見開かれた。