契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
そのうちに私からも触れたくなり、悠介の顔を両手で捕まえて唇にキスをする。そして、ふふっと笑っていると、悠介はそんな私を見て思い切り顔をしかめてから片手で目元を覆い……大きなため息をつきベッドに横になった。
悠介がぼふっとベッドに体を預けると衝撃でスプリングが揺れた。
ベッドの上で、向き合うように寝転がった悠介は、恨めしそうな顔で私を見た。
「おまえ、これが俺じゃなかったら確実に襲われてたからな」
「え、でも、こんなの、悠介以外の人となんてまず考えられない……」
キスだって、それ以上だって、悠介以外の男の人となんて無理だと思うのは、私の想像力の乏しさが原因だろうか。
親しい異性は中学、高校、大学、とそれぞれいた。でも、仲がいい友人止まりだったし、学校が変わればリセットされ継続されないようなその場限りの関係だった。
そんなだからか、そのうちの誰ともハイタッチくらいのスキンシップは想像できても、それ以上は無理だ。
というか、誰彼構わず友人以上のスキンシップを想像できる方がおかしいんじゃないだろうか。
そう思い顔をしかめた私を見た悠介は、困惑したような、少し照れたような、なんとも言えない顔をしてから、私の頭をかき混ぜるようにくしゃくしゃと撫でた。
「当然だろ」
「だよね?」
肯定され、声も表情も明るくなる。
笑顔で返した私に、悠介は「俺だってもう、おまえ以外……」と言いかけたけれど、途中で口を閉じ、起き上がると照明をしぼる。
「もう寝ろ。今日は疲れただろうし、明日は早番だって言ってただろ」
「ああ、うん。そうだね」
乱されたままだった下着を直し、ベッドに入る。
ほとんど真っ暗になった部屋の天井には、水が流れていくような映像が映し出されていて、綺麗だなとため息が漏れる。
あとで夏美さんにお礼と感想をメッセージで伝えようと考えながらゆらゆら揺れる水色を眺めているうちに、眠気がじょじょにやってくるのを感じた。
右を見ると、悠介は私に背中を向けて横になっていた。眠っているのかどうかはわからないけれど、規則正しく肩が揺れていて、それが愛しくて自然と顔がほころんでいた。