契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
でも……しばらく上下する肩を見ているうちに、なんとなく手を伸ばしたくなる自分に気付いて首を傾げる。
どうして私、悠介に触りたくてむずむずしているんだろう。
さっきまであんなに近くにいたから、この距離感が物足りなくなっているのだろうか。
いや、でも、本来付き合ってもいない男女の距離感としては、同じベッドで眠る時点でおかしい。近すぎる。
偽装結婚をして、夫婦みたいに同じ空間で過ごしているから勘違いしているのかな。
だとしたら、気を付けないと。あと二ヵ月足らずでこんなふうに毎日顔を合わせることもなくなるのだから、今の生活に慣れ過ぎたらダメだ。
……そう思うのに、悠介の背中から目が離せなくて、触れたい衝動を閉じ込めた胸は窮屈に苦しくなるばかりで止められない。
昔よりも少し広くなった背中。
大きな節だった指。暖かく優しい手のひら。
私をすっぽり閉じ込められてしまう力強い腕。
たまにからかう言葉を言う、低く艶のある声。
私の名前を呼ぶ、声──。