契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
『柚希』
頭の中に悠介の声が響いた途端、私を見つめる真剣な眼差しまで思い出され、鼓動が跳ねる。
『柚希はどうしたい?』
『おまえが落ち込むとなんとなく横顔でわかるんだよ。別に決定打があるわけじゃない。それでも、なぜかすぐにわかる』
『俺は、柚希が生まれてきたことに感謝してる』
今まで悠介にもらった言葉が、急に私の中で意味を持ち主張し始める。
それらはきっと、悠介からしたら落ち込んだ私を励ますつもりで言ってくれたもので、特別な意味なんてない。
でも、それをわかっていても私は嬉しくて、すごくすごく嬉しくて……単に悠介の心遣いを感じて気持ちがほころんだのだとばかり思っていたけれど、もしかしたら違ったのだろうか。
だって私は、触り足りないなんて、そんなはしたないことを誰が相手でも思うわけじゃない。
きっと、悠介だからもっと触れたいし、触れられたくて、ベッドの間にあるわずかな距離すらもどかしくなるんだ。
──もしかして。
私、悠介が好きなの?
部屋に流れるのは心地よいヒーリングミュージックで、落とされた照明の中、目に映るのはゆらゆらと揺れる水面。
ふかふかのベッドに、ちょうどよく沈む枕。
私の人生至上、ぶっちぎりで入眠しやすい環境のはずなのに、いつまでも心臓がトクトクと弾むせいでなかなか眠りにつけなかった。