契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


悠介のことを話しているだけで、なんとなく胸がざわついて落ち着かない。
そわそわして、ドキドキして走り出したくなるような、小さく縮こまりたくなるような、不思議な感覚だった。

蘭はパチパチと瞬きを繰り返したあと、「なるほど」とひとりで納得したみたいにうなずいていた。

「柚希的には、もうちゃんと初恋って自覚してるんだ。ほら、ひとりいたじゃん。憧れの男の人。私は、話を聞いていた限りだと、その人に対しての気持ちにも多少恋があったのかなって思ってたけど違うんだ」
「雄二さんは……うん。違うよ。雄二さんへの気持ちは私の一方通行で満足な感じなの。好きだからそばにいられたらそれで嬉しい、みたいな。悠介にも基本的にはそうだけど……ちょっとだけ、一方通行じゃ物足りないって思っちゃう。悠介にとっての私も特別だといいなって」
「なるほどねー」

楽しそうな声で言った蘭が、ニコニコしながらうんうんと首を縦に動かす。
満足と顔に書いてあるので、たぶん、私の恋の持論は間違ってはいないのだろう。

「それで、これからどうするの? 個人的には勝算もがっつりあるし一刻も早く告白しちゃっていいと思うけど」

そんなことを言い出す蘭に、少し考えてから口を開く。

「正直に言うと、告白はしたいと思ってる。なんか初恋だからかわからないけど、ひとりでこの気持ちを抱えているのがむずむずして落ち着かなくて出口が欲しいんだよね。とりあえず伝えたい欲がすごいっていうか。でも……ちゃんと離婚してからかな」
「え、なんで?!」

蘭が声を張り上げる。よほど意外だったらしい。



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