契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
もっと言えば、生活費を始め、かかる費用すべてを悠介が払ってくれているし、夏美さんは気のいい方だから、私じゃなくて誰が相手でも認めていたと思う。
二ヵ月という期間は、悠介が最初に言い出したものだけれど、何も予定通りじゃなくてもいいはずだし、悠介だって実はもう終わらせたいと考えているのかもしれない。
自分から言い出した手前、短縮しようと提案しにくいだけで。
だとしたら……あれ。これって、私から言い出せば解決する?
むしろ、早く私に言い出して欲しかった可能性すらあると気付き、期間中しっかり夫婦を演じようだのと明後日の方向に意欲を見せていた自分自身に青くなりながら悠介を見上げた。
「あの、悠介、結婚期間中に私がすることって具体的に何かある?」
真意を探るためにじっと見上げた私に、悠介はわからなそうに眉を寄せ、回り込みソファに座った。
「いや、俺側の条件としては最初から変わらない。姉と会って気に入られてくれればそれ以外にはない」
「そっか。じゃあ、もう二ヵ月とか待たなくても、籍抜いてもいい感じなのかなって思ったんだけど……悠介的にはどう思う?」
お互いの希望がすでに叶っているのなら、ダラダラと偽装結婚を続ける必要もない。
もしも悠介が、職場だとか親戚にしっかりと既婚者だとアピールしておきたいからある程度の期間、結婚しておきたいと言うのであれば従うけれど、どうやらそういうわけでもないらしい。
だったら……と思い、提案すると、私を見る悠介の瞳がスッと冷たく細められた。
背筋が冷たくなるような眼差しを向ける悠介を見るのなんて初めてだったので何も言えずにいる私に、彼がゆっくりと問う。