契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「ずいぶん急だな。雄二さんに何か言われたか?」
落ち着いたトーンなのに、切り込むような鋭さがあった。
気に入らなければ割とすぐに表情にも態度にも出す悠介が、こんなに冷たい雰囲気をまとうのは初めてで、戸惑いから心臓が速足になる。
「違うよ。私がそうした方がいいんじゃないかって思ったの。だって、今の状況は、私が悠介に迷惑をかけてるだけだから。助けてもらってすごく感謝してるのに、私はたいして返せていないし、その、今後もその機会がないならもう終わらせた方が資金的にも悠介に負担をかけずに済むかなって……役に立ってないのが落ち着かなくて」
怒ってるのかな、だとか、責められてるのかな、だとか、一度チラッとでも考えてしまったらもうダメだった。
声もすっと出なければ、言葉もつっかえつっかえになってしまい、いつもとは違う悠介相手に緊張している自分に気付く。
どうして悠介がこんなに静かな怒りを含んだ空気をまとっているのかはわからなくて、急に怖くなり指先から熱が失われていく。
呼吸が自然にできなくなり、喉がひくりと震えた。
そんな私を黙って見ていた悠介だったけれど、そのうちにハッとした表情をし……大きく息を吐いてから片手で目元を覆った。