契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


全力で否定した私を見た悠介は、しばらくは驚いた顔をしていたけれど、そのうちになんとも言えない面持ちとなり、最終的には苦笑し出す。

眉を下げて笑う悠介を見て、私もよかったとホッとして笑顔でいたのだけれど……それが十秒を超えたあたりから、気恥ずかしさがじわじわと襲ってきた。

なんだかものすごく子どもみたいなことを言ってしまった気がして恥ずかしい。

両手で頬を隠そうとするも、片手は悠介が握ったままだ。だから「離してよ」と手をぶらぶらと揺らすのに、悠介の手は一向に私を解放しなかった。

「嫌だ」
「嫌だって……子どもみたい」
「どっちが」
「やっぱり子どもっぽいって思われてた。絶対心の中でバカにしてる……」

手を離してもらうのは諦めて、片手で膝を抱えてそこに突っ伏す。

バイト時代、酔っ払いに絡まれていたところを助けてくれたのは悠介だし、子どもっぽい姿だって情けないところだって、今まで散々見られているし照れたところで今更だ。

でも……あの頃と今は違う。ただの悠介じゃなくて、〝好きな人〟なのだから、できれば私のいいところだけを見てほしいのだ。

「仕方ないでしょ。悠介みたいに難しい言葉並べて相手を納得させるだけの力があればいいけど、私にはないから……そしたら、信じてほしいって繰り返すしかないし」

口を尖らせて、本当に子どもみたいな言い訳をもらす。
そんな私を見てまた少し笑った悠介が、握ったままの手に力を込めた。


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