契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「ああ、言った」
「でも、本当は柚希から全部聞かされていた。知らないと嘘をついたのは、俺が口外すると思ったからですか?」
雄二さんは、店側にも〝知らない〟で通した。
母親が尋ねてきたとき、誰かが口を滑らせたら柚希が危ないから、という理由はわかる。
でも、俺には言ってくれてもよかったのにと思うのは傲慢な考えだろうか。
そんな思いが顔に出ていたのかもしれない。雄二さんは目を細めて「おまえはそんなやつじゃないよ」と俺の肩を叩いた。
「俺が黙っていたのは……どちらかと言えば、悠介の気持ちを考えたからだ。柚希側の事情だけしか関係なかったら、俺はおまえには話していたと思うし、柚希が出発する前に会える場を作った。おまえの柚希に対する気持ちはわかってたからな」
俺の気持ちは、毎回送り届ける以外にも態度や行動に表れていた自覚はあったし、むしろ柚希の鈍さに胡坐をかいてとくに隠そうともしていなかったため、雄二さんにバレていてもとくに驚きはなかった。
「俺の気持ち……実家関係ですか?」
「ああ。柚希の家出の理由を深くまで掘り下げれば、いずれ買収の話に行きつく。そこにおまえが変な責任を感じたりしないか心配だったんだ。ただでさえ厄介な立場にいるのに、そこに罪悪感まで乗っけたくなかった」
苦しそうにしながらも微笑んだ雄二さんが続ける。