契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「柚希を妹みたいだと思っていると言ったが、悠介のことも弟みたいに思ってるんだよ。色々心配するのは当然だろ。ただ、黙っていたのは悪かった」

今までは肩を叩いていた手が、今度は頭を撫でようとしてくるのでさすがに軽く払いのける。
学生の頃ならまだしも、もうそんな年じゃない。

俺の小さな反抗を受けても笑っているところを見ると、どうやら雄二さんはそこまで見越していたらしい。
人のいい笑顔は昔から変わらず、責める気にもならない。

雄二さんはまだ楽しさが残る声で「でも」と話題を変える。

「もう、俺がやきもきして柚希を心配する必要もなさそうだけどな」
「なんでですか?」
「先日、柚希と電話したんだ。柚希が家を出てからもそれなりには連絡を取り合っていたが、今回が一番明るい声をしていて安心した。恋愛にも興味が出てきたみたいだしな。電話越しでも雰囲気が変わったのがわかったよ」

最後、意味深な表情で言った雄二さんに目を見開く。
柚希が雄二さんに好意を寄せていたのは確かだ。それをわかっていても俺がそこまで焦らなかったのは、雄二さんは柚希を妹のようにしか思わないと……思えないと考えていたからだ。

でも、違うのかもしれない。

不意にそう思えてきて黙った俺に、雄二さんが「おまえがそばにいるおかげだな」としみじみといった声で言う。
そんな雄二さんを見ながら、昔、彼にじゃれついていた頃の柚希のことを思い起こしていた。


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