契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
◇「未練なんて少しもない」
蘭からメッセージが届いたのは、十月二十五日の月曜日。悠介と再会し、契約をしてからちょうど三週間が経とうとしていたときだった。
〝有沢グループのスキャンダルがネットニュースになってるんだけど、見た?〟
十四時過ぎ、部屋の清掃が終わったタイミングでのメッセージに「え……」と無意識に声が漏れた。
蘭が貼り付けてくれていたリンクをタップするとすぐに記事に飛ぶ。そして飛び込んできた『有沢グループの黒い歴史』というタイトルに息をのむ。
ドクドクと心臓が不穏な音を響かせる中、なんとか読み進めていくと、内容は悠介の出生にまつわるものだった。要約すると、お父様が愛人に産ませた子どもが悠介という内容で……奇しくも私の出生と重なり、すぐに頭が働かなかった。
ただ動揺している間に蘭から電話がかかってきたので、混乱しながらも通話ボタンを押した。
『あ、見た? 私、今バイトの休憩中なんだけどね、情報番組で取り上げられてて慌てて調べたらネットニュースにもなってたから驚いちゃって。あ、ほら、あの下世話な番組』
以前、お昼休憩中、蘭と一緒に見ていた番組が頭に浮かぶ。司会者の中年男性もコメンテーターも言いたい放題で、当事者でもないのにいい気がしなかった覚えがある。