契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「ああ……うん。これ、本当なのかな。どんな感じで放送されてたの?」
『今までクリーンなイメージしかなかっただけに致命的、みたいな言い方されてた。でもね、元記事は三流週刊誌だってことと、情報提供者が匿名で、信ぴょう性にはかけるって言ってたよ』
そういえば、さっき蘭が送ってくれた記事についていた週刊誌のロゴは、たしかに聞いた覚えのないものだった。
「だったら、PV稼ぎとかが目的のフェイクニュースって可能性もあるのかな。いや、でも、嘘をこんな大々的に世間に公表しないか……」
『いや、全然しそうじゃない? まぁ、事実にしてもそうじゃないにしても、こんなネタ提供するって有沢グループを相当恨んでる人がいるんだなって思って。柚希と有沢さんが結婚して間もないタイミングだったし、万が一柚希が危険な目に遭ったりしたら嫌だから知らせておいただけ。一応、気をつけなね』
早口に言った蘭が『あ、ごめん。そろそろ戻らなきゃ』と慌ただしく電話を切る。
休憩時間の終わりが近づく中、急いで電話をくれたのだろう。私の身を案じてくれた蘭に感謝しながら、ざわざわしている胸を上から押さえた。
事実かどうかも不明なら、事実だった場合、夏美さんやおじい様は知っていたのかだとか、気になる問題が多すぎて頭が混乱する。
そんな中でも、悠介はもうあの記事を読んだのだろうか、とそれが一番心配だった。
だって、もしもあの記事が事実で、もしも悠介が今回初めて自分の出生を知ったのだとしたらものすごいショックを受けているはずだ。
そういえば……ここ数日、悠介の様子がおかしかったことを思い出す。
ソファで夜遅くまで書類を確認していたし、話しかけても上の空だった。悠介が仕事を部屋まで持ち込むことも、あんなに心ここにあらずという感じなのも初めてだ。
ああいった記事は、雑誌なりネットなりに載る前に本人に報告があると聞いたこともあるし、もしかしたら悠介は少し前から知っていたのかもしれない。だから、どこか元気がなかったのだろうか。
考えれば考えるほどそんな気がしてきて、ホテルの部屋でひとり、落ち着きなく動き回るのだった。