契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


悠介が帰ってきたのは、十八時過ぎ。いつもよりも早い帰宅時間だった。

「おかえりなさい」
「ただいま」

最早恒例となっている挨拶を交わした悠介は、鞄とスーツのジャケットをソファに置くと洗面所に向かう。そして、うがい手洗いを済ませ、ネクタイを緩めながら冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを取り出す。
それから、ソファの左端に腰かけた。

ここまでは、仕事を終えて帰宅した悠介のルーティンだ。割と取引先から手土産をもらうこともあり、そんな日はルーティンにその手土産を私の頭の上にポスンと置いて驚かせるという行為も加わるのだけれど、今日はないようだった。

私はソファの中央に座りクッションを抱えた状態で悠介の一連の様子をこっそり盗み見していたけれど、やっぱりどこか元気がなく思えた。

思い起こしてみれば、悠介がここまで落ち込んだ横顔をするのは初めてだ。あのネットニュースが事実にせよ嘘にせよ、悠介は少なからずショックを受け思い悩んでいる。

きっと気のせいではないと確信し、ミネラルウォーターを飲んでいる悠介の方を体ごと向いた。

「悠介。血筋なんてたいした問題じゃないよ。ほら、私の家がこれ以上ないくらいいい例だよ」

ペットボトルのキャップを閉めた悠介がこちらを向くので、真っすぐに見て続ける。

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