契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「母親は血の繋がりなんてない兄を溺愛してるし、父親は血の繋がりのある私を助けてくれることもなかったし、いないものとして過ごしてた。だから、血なんて関係ないよ。悠介は、今まで築いてきた、お姉さんやおじい様との関係を信じればいい」
悠介の瞳が揺れたのを見て、たまらず手を伸ばす。
身を乗り出し、悠介の左手を両手で包むように握った。
「たいして知りもしない私が言ってもうるさいだけかもしれないけど、関係のない誰かが無責任に言う言葉なんて、信じる必要はこれっぽっちもないと思う。私から見たら、悠介と夏美さんはこれ以上ないくらい素敵な家族だよ」
事実がどうであれ、悠介に傷ついたままでいてほしくない。
しかもこんな、自分の名前を名乗ることもできないような卑怯な人のしたことで、悠介がショックを受ける必要なんてない。
そう思い必死に告げたのだけれど……気付けば悠介はキョトンとした顔をしていて、次第に疑問が湧いてくる。
「あれ? あの……ネットニュースの件で悩んでたんだよね?」
そっと両手を離して聞くと、悠介は少し考えを巡らせるように眉を寄せたあと「ああ……なるほど」と納得がいった声を出した。
「あのニュースを見て、そうとるとは思わなかった」
「そうとるって……だって、それ以外に捉え方なんて……って、え、違うの?」
ショックを受けていたんじゃないのかと聞いた私に、悠介はひとつ息をつき、後ろ髪をかいた。