契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「あれの出所は一般人のSNSで根拠もないフェイクニュースだ。俺も記事の件は今朝事務所で聞いたんだ。情報開示を求めて相手を突き止めてから訴えるつもりでいたが、目星はついていた上、犯人のアカウントが本名だったから話が早かった」
「え、じゃあもう犯人がわかってるの?」
「ああ。ただこちらに確証はあっても、そのSNSがそいつのアカウントだという証拠が必要だ。だから情報開示請求の結果が届き次第、逃げようのない証拠として提出して……俺は今後の抑止剤として見せつけがわりに訴訟まで持っていきたいところだが、おそらく示談で終わるだろうな」
示談……つまり、相手が誠意としてお金を支払いそれで終わりになるのか。
少し前、SNSで誹謗中傷していた人が訴えられ、裁判で数十万円の支払いを命じられていたのを思い出す。
でも、相手が有沢グループとなれば、企業イメージダウンだとか株価下落だとか、色々関係してきそうだしそんな額で決着がつく問題ではない気がするけれど……。
「あの、犯人って誰だったの?」
もうほぼ目星はついているという話だったので聞く。
普通に聞いてから、図々しすぎたと質問を取り下げようとしたけれど、悠介が何でもない様子で口を開く方が先だった。
「俺が顧問弁護士として契約している企業の社長令嬢だった。少し前に社長から見合い話を持ち掛けられて断ってたんだ。あのとき、娘が俺を気に入ったみたいなことも言っていたし、たしかに本人から事務所に何度か誘いの電話もあった。アポなしで事務所やマンションまで来ることまであったくらいだから、乗り気だったのに断られたのが癪に触って……ってところだろ」
「お見合い……そういえば、断るのが面倒だって言ってたもんね」