契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「一ヵ月くらい前、婚約指輪を買った帰り道、視線を感じるって言ってただろ。あれもおそらく彼女だ」

てっきり私の実家関係かと思っていただけに驚く。

でも、そういえば、母親からの電話に出て結婚報告をしたとき、母親はなにも知らなそうな反応をしていたっけ。
ジュエリーショップから出て誰かの視線を感じたとき、悠介が言っていたことを思い出す。

『いや、俺にも心当たりはあるし、その可能性も……まぁ、タイミング的には柚希を探していると考えるのが妥当か』

あれは、今回の彼女のことを言っていたのかと納得した。

「え……あ、じゃあ、悠介がマンションじゃなくてホテル住まいだったのも彼女が原因?」

契約を結んでから住まいの話になったとき、悠介はここ数ヵ月はホテル住まいだという言い方をした。
つまり、それまではマンションに住んでいたということだ。

それを聞いたときもなにか事情がありそうだと思いながらも聞けずにいたのだけれど、もしかしたらそういうわけだったのだろうか。

悠介は私の予想通り、「そうだ」とうなずき、面倒くさそうに眉を寄せた。

「マンションまで来られるのは気持ち悪いからな。本人にも父親である社長にも何度か注意したが、そういう行動をとる本人に話が通じないのは想定内だとしても、父親の方も娘可愛さなのか注意する様子もなければ、しまいには〝孫の顔が見たい〟だの言い出したから、早々にホテル暮らしに切り替えた」

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