契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「顧問弁護士してるんだっけ……。お客様だからあまり強く出られない感じなの?」
彼女のしている行為は犯罪だし、それを注意もせずに煽っている社長だっておかしい。
迷惑だと言っているのに孫だなんて、どういう思考回路をしているのだろうとすら思ってしまう。
そんな相手なら昔の悠介の印象から、契約を切ったりしそうなものなのにな、と思い聞いた私に、彼は淡々と答える。
「関係性としては対等だ。ただ、大口先ではあるし、それにそこまでのことをされている以上、このまま切って終わりももったいないだろ。いずれあちらの弱みになるのは確実だし、タイミングを見て逆手にとって有利に持っていく方が事務所にとっても利益になる」
「ああ……なるほど。じゃあ、今回のSNSが決め手になるんだね」
それまでの行為だって十分犯罪だけれど、今回のフェイクニュースは度を越しているし悠介個人ではなく有沢グループとしての問題になっている。
社長だっていくら娘が可愛くても庇いきれないし、責任は免れないだろう。
「今までの行為についても全部まとめて訴えてやるつもりだ。付きまとい行為が原因でホテル生活になったわけだから、その宿泊代も盛り込む。まぁ、今までスルーしてきたぶん、誠意を見せてもらう」
表情ひとつ変えずに話す悠介に感心する。
マンションでの暮らしを奪われたのなら、もっと怒りに直結してもおかしくなさそうなのにその横顔は冷静そのもので、すごいなぁと今更ながら感心した。