契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
◇「それで、結婚の報告ってことでいいのかしら」


結婚相談所へと続く階段前で有沢と偶然の再会を果たし、お互いの都合がいいという理由から、期間限定で契約結婚しようという話になった十月初めの月曜日。

そして、そこから五日が経った本日、土曜日。私は、白の膝丈ワンピースにワインレッドのカーディガンといういで立ちで約束の場所に向かっていた。

水色やベージュ色の小ぶりの花柄が散りばめられているワンピースも肌触りのいいカーディガンも有沢が送ってくれたもので、一時間前、初めて袖を通したにもかかわらず、鏡の中の自分にとてもしっくり馴染んでいて驚いた。

そういえば、五日前に再会したとき、有沢はスリーピースを着ていた。思い返してみれば、有沢の体のラインに合っていたし、もしかしたらオーダーメイド品かもしれない。生地もとても上品で綺麗だった……ということは、このワンピースやカーディガンも相当いい値段がする代物だったりするのだろうか。

服だけでなくベージュ色のパンプスもオフホワイトのバッグも、そしてピンクベージュのリップも同封されていたことを思い出し、しかもこちらも逆に不自然なほど肌に馴染んでいるものだから、なんだか不安に駆られる。

とんでもない金額のものだったらどうしようと、本番はこれからだと言うのに、急に落ち着かなくなる。

……いや。でも、これは仕事だ。お姉さんに会いクリア判定をもらうのことが、有沢が与えた私の使命。そう考えれば、これらの服や靴はいわば支給された制服でしかない。


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