契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
私に気付いた有沢は、なぜか少しホッとした表情をしてこちらに近づく。
白いTシャツに黒のジャケットとパンツという、とてもシンプルな服装だけれど、とても洗練されて見えるのは、有沢自身の見た目やスタイルの良さが原因だろうか。
「外で待っててくれたんだね。ありがとう」
そう笑いかけると、有沢は「別に」と言いながら私をじっと見る。
視線が顔から足元に下がっていき、再び顔に戻るまで数秒あった。
「もしかして、似合ってない? 浮いてる? 自分では顔移りもいいし気に入ってるんだけど……」
鏡を見てしっくりきてはいても、こうも凝視されて黙られたら不安にもなる。
だからドキドキしながら聞いた私に、有沢が顔をほころばせるので驚く。
安心したような柔らかい微笑みだった。
「似合わないはずがないだろ。おまえに合うと思って俺が選んだ服だ。でも、気に入っているならよかった」
最後のひと言は、独り言みたいなトーンで言った有沢に一瞬胸を高鳴らせていたのだけれど。
「せっかく肌も綺麗だしスカートも似合うのに、そういう服を着て会う相手がずっといなかったのがもったいないな。中身が子どもっぽすぎるのかもな」
続いたのは、私をからかう言葉と意地悪な笑みだったので、ときめきが瞬殺される。
有沢の言い当てた通り、今までこういう服を着て会った男性はいない。
それを、機会がなかっただとか生活するのに精いっぱいだったとか説明するのは言い訳にしか聞こえない気がして、口を尖らせた。