契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「なんとでも言えばいいよ。でも、私が知る限り有沢だって女の子の噂とか皆無だったし、私とそこまで経験値の差があるとも思えないけど」
負け惜しみだった。
昔、有沢がものすごく綺麗な女性と一緒に、〝speme〟に来たことがあるのは知っているし、あまりにふたりが目立つからバックヤードはかなりざわついたものだ。
有沢はああいう女性ときっと素敵なお付き合いをして今日まできたのだろう。
だって、相談してすぐにこんな素敵なコーディネート一式を送ってくれて、私の不安をわかっていたみたいにホテル前で待っていてくれた有沢は、レディーファーストに慣れている。
再会した日、ホテルの一室で話したけれど、あのときだって有沢は私におかしな緊張を抱かせないように、たぶん、意識して一定以上距離を縮めなかった。それまでずっと掴んでいた腕も部屋に入った途端に離してくれた。
そういう立ち振る舞いからは、大人の男性としての余裕が滲んでいて……三年間という時間の大きさを感じた。
だけど、大人になった有沢相手にどんな態度をとればいいのかもわからないので、今までの〝男子〟だった有沢相手にするみたいな口調で言った私に、彼は気に入らなそうに片眉を上げる。
〝そんなわけがあるか〟という笑みが返ってくるとばかり予想していただけに、その顔は意外だった。