契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「え、本当に?」
「ただ誰とでも軽く付き合うのが嫌なだけだ。気持ちがない相手に時間を割いて、それどころか平気で触れられる方がどうかしてる」

ふん、と少し偉そうな態度で言う有沢を、しばらく呆けて見ていたけれど……でも、たしかに有沢は誰とでもというタイプではないかもしれない。
それよりは、心に決めたただひとりをずっと想い続ける方がしっくりくる。

「それは、うん。その通りだと思うし、なんかごめんね。経験値とか言ったけど、私のと有沢のとは意味合いが違う気がする」

有沢はしっかり自分のポリシーを持った上での結果で、私は、なんとなく興味を持たず突っ走ってきた結果でしかない。
それを並べて同じようなものだと言った自分を反省していると、有沢は「おまえのはただのミーハーだろ」と言い放った。

「ミーハー?」
「ああ。雄二さんに対する態度がそれだった。それより、そろそろ中に入る。待ち合わせはラウンジだ。待たせて文句を言われるのも面倒だからな」

有沢が歩き出すので、私もそれに続く。

お姉さんとの約束の時間は十三時。駅前広場に立っている大きな時計台はすでに十二時五十分を指しているし、たしかにそろそろ入っていないと失礼になる。

ミーハーだと言われたのは引っかかりながらも、とりあえずは有沢に従い、ラウンジに移動して……想像はして覚悟も決めていたものの、その場違い感にゴクリと喉が鳴った。

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