契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
一般的な体育館ほどのスペースには、十台ほどのダークブラウンの丸テーブルが等間隔で置かれ、それぞれ四台のソファが囲んでいた。
ソファの色は、オフホワイトと少しくすんだ水色で、腰を支えるために置かれたクッションは、白に銀色で刺繍が施されているものだった。
高い天井から吊り下げられている照明は、まるでダリアの花のような形をしていて、昼白色のオレンジがかった柔らかい色の光が透けて見える。
駅前広場が見渡せる立地を生かし壁は一面ガラス張りとなっていて、そこからたくさんの緑や、さきほど見た時計台も望めた。
とても煌びやかで開放的で素敵な空間だった。
有沢が一番奥のテーブルで足を止め着席を促すので、言われた通り腰を下ろし、こっそりと周りを見回した。
こんな高級ホテルのラウンジでお茶しているような人たちは一体どんな層なのだろう……と思ってのことだったけれど、ゆったりとした時間を楽しんでいるような熟年夫婦や、お見合いかな、という方まで世代は様々だった。
「アフタヌーンティーを頼んである。飲み物は好きに選べ」
渡されたメニューカードからホットティーを選ぶ。
ホットコーヒーとホットティーを注文した有沢は、ガラスの外に視線と移すと、しばらくした後「雄二さんに、憧れてただろ」と呟くように言った。
出された名前に、さっきのミーハー発言を思い出した。