契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける

「俺は、単純に人間として尊敬しているから会いに行っていただけだ。でも、おまえは違うだろ」
「同じだよ。私だって、尊敬して憧れてただけだもん。ねぇ、それより、今でも雄二さんと会うの?」

私は、電話やメッセージで連絡は取り合っていても、直接会えてはいない。もう三年も。
だから雄二さんの様子を教えてもらいたくてそう聞いた私に、有沢は「俺もそこまで頻繁には会っていない」と答えた。

「今の生活の基盤はここだし、仕事を始めてからはなかなか顔を出せてない」
「ああ、そっか。そうだよね。っていうか、地元じゃないのにこうして会えたのってすごい偶然だよね。今更だけど嬉しい」

笑顔で見上げると、有沢は一瞬目を見開いた後、口元を手で覆い顔を逸らす。
急にこちらを見なくなった有沢を、どうしたのかと思い眺めていたとき「悠介!」と呼ぶ女性の声が聞こえた。

咄嗟にそちらの方向に視線を移すと、黒髪の美女がこちらに向かって歩いてくるところだった。スラッとしたモデル体型の女性は、白のタイトなワンピースに紺色のジャケットを羽織っていて、胸までの髪にはふんわりとしたパーマがかかっている。

色っぽく整った顔立ちがどことなく有沢に似ているのを見て、この方がお姉さんだと気付き、立ち上がった。


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