契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「白川柚希といいます。三年前まで有沢グループのレストランでバイトをさせて頂いていて、そこで……」
「ああ、悠介と知り合ったのね。なるほどね。ところでその服、私のブランドの物だけど、すごく似合ってるわね。可愛い」
「えっ……そうだったんですか? 有……悠介さんが今日のために用意してくれた物なので何も知らなくて」

着る際、ワンピースもカーディガンも〝natu〟というタグがついていた。ただ、同じブランドの物なんだなぁ程度にしか思っていなかったけれど、まさか夏美さんのブランドだったなんて、と驚く。

「うちが今年の秋用にリリースしたデザインの物ね。柚希ちゃんくらいの年代からアラフォーまで、幅広い客層に向けて作ってるんだけど、そのワンピースは特に人気なのよ。ああ、靴とバッグも……。へぇ、悠介がねぇ」

夏美さんがチラッと視線を向けても、有沢は返事をせず、運ばれてきたコーヒーに手を伸ばしていた。
きっと有沢はわざと夏美さんのブランドの服を用意してくれたのだろう。その方が心象がいいから。

とりあえず、似合っていると言ってもらえてホッとしているとアフタヌーンティーのセットが運ばれてくる。
シルバーのワゴンの上に置かれた、鳥かごのような可愛らしい台や、ケーキやクッキーといったスウィーツに心躍らせていると、「それで、結婚の報告ってことでいいのかしら」と夏美さんに話しかけられる。


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