契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「ああ。姉さんへの報告が済んだら近いうちに婚姻届けを出す。籍を入れたら、とりあえずホテルで暮らしながら新居をゆっくり探す予定だ」

そのへんのことについては、あらかじめ有沢と話は詰めてある。

『二ヵ月間の結婚生活にかかる費用は全額俺が負担する』
そう言い出した有沢は、私の折半案を頑なに聞き入れず、こちらが折れるほかなかった。

私としては、籍だけ入れてもらえれば住む家は別々で構わないのだけれど、有沢は同居にこだわった。
しかもマンションを探すと言い出し、提案された物件の家賃がとんでもなかったため、ホテルでいいから!とお願いした。もう懇願に近かったと思う。

あんな家賃のマンションの敷金礼金はとんでもない金額になるのを瞬時に計算してしまったので、必死だった。
でも、考えてみれば有沢は御曹司。あれくらいの家賃の部屋が彼にとっては当たり前なのだろう。

不満げな有沢が次に提案したのがいくつかの有沢グループのホテルで、それもどこも目を見張るような宿泊料金ではあったものの、有沢グループの所有であるぶん、なんとなくマンションよりは出費が少ない印象を持ち、渋々ホテルを選択した。

なので、夏美さんに報告して反対がなければ、このまま今日から有沢が用意してくれたホテルの部屋での生活がスタートする予定だ。

ちなみに、有沢はここ数ヵ月はもともとホテル住まいだったという。
少し事情がありそうな雰囲気を感じたので、理由については聞いていないけれど、今までがそうだったのなら有沢的にもホテルの方が無難だろうとも思った。


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