契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「そう。悠介、あれだけのお見合い話断ってたし、相手に興味がないだけじゃなくて決まった子がいるのかなぁってちょっと思ってたら、本当にそうだったのね。今までそういう話全然聞かなかったから感慨深いわー。悠介から恋愛関連の話をされるのはこれで二回目かしらね」
「おい」

有沢がギロッと睨んでも、夏美さんは慣れた様子でニヤニヤと笑みを浮かべていた。

夏美さんが来る前、有沢もあまり恋愛経験はないようなことを言ってはいたけれど、これだけの美形なら周りが放っておかないだろうし、ひとりやふたり、お付き合いした女性がいても当然だ。

恋した有沢がどんな感じになるのかは気になるし、その上、夏美さんに報告するくらいの真剣交際だったのなら私もそのうち話を聞いてみたい……とは思うものの、今と同じような顔で睨まれる未来しか見えなかった。

「こんなおめでたい話なら祖父も来られたらよかったんだけどね。ごめんね」

申し訳なさそうに表情を崩す夏美さんに、笑顔を返す。

「いえ。悠介さんから、おじい様は今抱えている案件が無事解決するまではお忙しいと伺っていますので大丈夫です」
「ありがとう」

安心したような微笑みでそう言った夏美さんが続ける。

「うちは、早くに両親を事故で亡くしているの。祖父がまだしっかりしているから、グループの代表を務めていてね、しかも私たちは自由にすればいいってずっと言ってくれてたの。だから私も悠介も好きに仕事を選んできたけど、私はそろそろ祖父を手伝おうと思ってる。もう十分好き勝手したし、祖父の仕事には私自身興味もあるしね」


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