契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「なにが?」
「これを提出したら夫婦になる。いつまでも名字で呼び合っているのはおかしいだろ」
「え……ああ。うん。〝悠介〟ね。〝さん〟つけた方がいい?」

ずっと敬語なしできているとは言え、有沢……悠介の方がよっつも年上だ。

しかも有沢グループの御曹司となれば、私が呼び捨てするのもどうだろうと思い聞いたのだけれど、悠介は「必要ない」と即答し私を見た。

「挙式披露宴については、どんな大きさの式にしろ、挙げるとなれば柚希、の家族に声をかけないわけにもいかなくなるし、母親側が態度を改めるなりするか……もしくは、はっきりと縁を切るか。どちらにしても、柚希側の問題が落ち着いてからを考えている」

淡々と話し出した悠介は一度〝柚希〟と私の名前の部分で一度突っかかった。
さっそく名前で呼ばれたことよりも、まず、悠介が私の名前を知っていたことに驚いたのだけれど、考えてみれば夏美さんに自己紹介したし、婚姻届にもフルネームを書いている。知っていても不思議はない。

「え、いや、挙式披露宴なんて必要ないよ。だって二ヵ月後には離婚……」
「もちろん、柚希が望むなら場所もドレスもすぐに手配する。……どうする?」

〝二ヵ月後には離婚しているんだから〟と続けようとした言葉を遮られる。
私をじっと見て、真意を確認するように問う悠介に、少し戸惑いながらも首を横に振った。

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