契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
ここは、ブライダルサロンが入っていたビルからほど近い、高級ホテルの一室だ。
どうしてそこまで気になるのか、結婚を急ぐ理由を話せと言い出した有沢に、そんな往来でペラペラ話せる内容でもないと説明すると「来い」と連れてこられたのがこの部屋だった。
ちなみに、受付をしている間もエレベーターの中でも、この部屋のドアを閉めるまでずっと腕を掴まれた状態で、なんでそんなに私の抱える事情が知りたいのかなとだいぶ不思議に思った。
痛くはないにしても、〝逃がさない〟という意思が伝わってくる程度にはガッシリ拘束されている。
有沢は私が知る限り他人の悩みに自ら介入していくタイプではなく、むしろ面倒くさがるタイプだったはずなのに……雰囲気同様、三年で変わったのだろうか。
それとも、話が中途半端なのに私が逃げ出さないように警戒しているのだろうか。
……だとしたら、前科があるだけになにも言えない。
座っているソファから視線を左にずらすと、三十八階からのすばらしい展望が窓の外に広がっている。
今はお昼過ぎだから、青空と街並みが部屋を爽やかに演出しているけれど、日が暮れ夜景になれば、部屋の雰囲気も一気に変わるのが想像できる。