契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「柚希? どうかしたか?」
私の数歩先で立ち止まり振り返った悠介に聞かれる。
私はもう一度視線を巡らせてから、悠介に駆け寄り、彼の腕に手を絡めた。
「……なんだよ、急に」
驚いたのか、わずかに体を強張らせた悠介に、「しっ」と小声で言い体を密着させる。
「ごめん。車までくっつかせて。たぶん、誰かに見られてる」
前を向いたまま説明すると、悠介も後ろを振り返ることなく私に合わせてくれた。
「おまえの実家の関係か?」
「わからないけど……でも、この一年、連絡が以上にしつこかったのはたしかだし、もしかしたら痺れを切らせて探偵とかに居場所を探らせたりしてるのかも」
「いや、俺にも心当たりはあるし、その可能性も……まぁ、タイミング的には柚希を探していると考えるのが妥当か」
小声で話しながら駐車場まで歩く。
背後に意識を集中させているせいもあるのか、やっぱり視線は付きまとってきている気がした。誰だかわからないのが気味悪い。
そんな私の心情を悟ったようなタイミングで悠介が口を開く。
「まぁでも、居場所を知られたところで問題ないだろ。つけてきているのが本当に探偵だとしたら俺のことも調べるだろうし、謄本でもとってくれればもう俺と柚希が籍を入れて実際に同居していると報告が上がるだけだ。それを見て結婚の事実を疑う人間はまずいない」
「そうだね……。これ以上ない証拠だもんね」