契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


最初は、籍を入れたらすぐに母親に報告するつもりでいたのだけれど、悠介が二ヵ月と言い出してからは、今現在の母親の様子や〝白川楼〟の状況を調べて、なるべく逆撫でしないようなタイミングを計った方がいいかもしれないとも考え始めていた。

でも、タイミングなんて待っていたら、いつまで経っても踏ん切りがつかない可能性もある。それにあの母親が落ち着くときなんてこないかもしれない。だったら流れに任せた方がいいってものだ。

悠介の言うように、今、住んでいる場所がバレたところで、悠介と同居している以上は母親だって手を出せないはずだ。

そう考えると、有沢グループの名前がものすごい効果を発してくれているので、あのとき悠介が偽装結婚を言い出してくれてよかったと今更感謝する。

「それより、悠介の方はどんな感じなの? 夏美さんと会う以外に私ができることはある? 本当におじい様とか他の親族の方には会わなくていいの?」

夏美さんには許可をもらえたとはいえ、やっぱりおじい様の存在は気になる。
後で悠介が責められたりするくらいなら、私が憎まれ役になった方が絶対にいいと思い進言したのだけれど、悠介の答えは変わらなかった。

「祖父は頭が柔らかい人だし……まぁ、たとえ戸籍にバツがついたところで口うるさく言ってくるようなことにはならないから安心していい。もちろん、柚希の家柄や生い立ちについて口出しもしない。あくまでも俺たちの気持ちや考えを優先してくれる人だから、柚希もなにも心配しなくていい」

きっぱりとした物言いなのに、その声には優しさがあった。
きっと、おじい様を思い浮かべたからなのだろう。おじい様を尊敬もしているし、なにより好きなんだなぁとわかり、顔がにやける。


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