契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「そっか。わかった。でも、そんな素敵な人なら、会ってみたかったな」
素直な気持ちを吐露してから、我に返って悠介を見上げた。
「あ、でも、期限付きの結婚だしね。私も、どうせ離婚するなら顔なんて合わせない方がいいと思ってるよ」
偽装結婚のパートナーの分際で、会いたいなんてわがままを言っているように取られたら申し訳ないと思った。
だから、それは違うし、プライベートに立ち入る気もなければ取り合ってもらう必要もこれっぽっちもないと伝えたくて言ったのに、私のフォローを聞いた後の悠介の方が不満そうなのでわけがわからない。
なにか間違ったことを言っただろうか。
再会してからたまに悠介の不機嫌スイッチを押しているのは自覚しているものの、それがどこに存在しているのかが未だわからなくて困る。
そうこうしているうちに駐車場についたので、まぁいいかと流し乗り込む。
エンジンをかけた悠介は、すぐにはシートベルトをつけずに、ジュエリーショップのショップ袋から同じ色の長方形の小さな箱を取り出した。
白いリボンのかかった箱を開くと、中には行儀よく並んだ指輪がふたつ。買ったばかりだからか、初めて間近で見る結婚指輪だからか、とてもキラキラして輝いて見えた。
シルバーのいたってシンプルな指輪だけれど、女性用の指輪にはダイヤが斜めのラインに散りばめられている。
私はあのとき詐欺を疑い熟考していたので、他にどんなデザインのものがあったのかはわからないにしても、絶対にダイヤが入っていないタイプのものだってある。
それなのに、わざわざこんな素敵なデザインを選んでくれたのか……と眺めていると、悠介が女性用の指輪を手にとった。そして、もう片方の手を私に差し出す。
何をするつもりなのかがすぐにわかり、少し緊張しながらも悠介の手に自分の手を重ねた。