契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


ここ一年ほどのしつこい連絡の理由がもしかしたらわかるかもしれないと思い偵察をお願いしたのだけれど、写真を見る限り、〝白川楼〟に変化は見られない。

大きなリフォーム工事をして資金繰りが難しくなっただとか、そういう理由ではなさそうだ。

「……懐かしい」

あまりいい思い出がなくとも、やっぱり二十年住んだ場所なので、そんな感想が口をついた。
こうして〝白川楼〟を見るのは、三年ぶりだ。

「どう? なにか変わってたりする?」

蘭が横から覗き込んでくるので、ゆっくりと首を横に振った。

「ううん。旅館、どんな感じだった?」
「んー……正直に言うと、そこまでって感じだったかな。建物自体は部屋も温泉も趣があってすごく素敵で、掃除とかも行き届いていて綺麗だったけど、暖かみがあまりっていうか、旅館ならではのおもてなしがあまりっていうか。次また旅行するなら違うところに泊まろうって考えると思う」

的を得た感想だった。
さすが旅行が趣味なだけある。

暖かさやおもてなしの心は、十年前、〝白川楼〟から消えてしまったもので……私が大好きだったものでもあった。


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