契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
ひとり暮らしが板についているため、家の中でノックをする習慣が欠如している自分を反省しつつ、ノブに伸ばそうとしていた手でドアを叩いた。
土曜日からの生活リズムを考える限り、この時間にお風呂ってことはないだろう。悠介も雨で濡れて着替えるなりしているのかもしれない。
「悠介、ただいま。ちょっとタオルとりに入っても大丈夫?」
「ああ」
すぐに許可されたのでドアを開けたのだけれど、その途端目に入ってきたのが上半身裸の悠介だったので、頭が真っ白になった。
正式に言えば、Yシャツを着てはいるけれど、そのボタンが全開なので羽織っている状態だ。そのため、悠介の肌が幅十五センチほどおへそのあたりまで見えている。
驚きすぎて数秒間ポカンとしてから、ようやく我に返り両手で自分の目を覆った。
「ちょ……っ、ねぇ! 裸なのになんで〝入っていいよ〟って言うの?! 騙された!」
なんで半裸状態で私に入室許可を出すのか、わからないし信じられない。
指の間から睨む私に、悠介は悪びれる様子もなく、わけがわからなそうに眉を寄せる。
「は? 下は履いてるし、上だってほぼ着てるようなもんだろ」
「それは着てるって言わない。絶っ対に言わない」
私が頑なに譲らないからか、悠介は不思議そうに片眉を上げた。