契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「だってすごいと思って。ねぇ、なにかスポーツしてるの? それとも筋トレが趣味とか? 食事も気を付けてたりする? あれ、でも一緒に食べるときは私と同じようなメニュー食べてたよね?」

この二日間の食事を思い出してみても、悠介はタンパク質にこだわっていた様子はなかった。パスタだとかサンドイッチだとか、炭水化物も普通にとっていたし、食事制限はしていない。この部屋にあるミニキッチンにプロテインが常備してあるわけでもない。

となると、運動量がすごいということだろうか……と考えていると、上からふっと笑い声が漏れた。
腰を折り、両膝に手をついたまま見上げると、悠介が拳を口元に当てている。腹筋がぴくぴく揺れていた。

「すごい食いつきだな。筋肉にそこまで興味があるとは思わなかった」

隠していても、細められた目と吊り上がった口の端、それに揺れる腹筋で、笑っているのはバレバレだ。
おかしそうに笑う悠介を見るのが久しぶりに思えて、今度は筋肉ではなく顔を凝視してしまう。

悠介はそんな私の眼差しには気付かずに続けた。

「学生時代からずっとボクシングを続けてるからそのせいかもな。でも、トレーニングとしてであって、試合に出るとか、そういうレベルじゃない」
「へぇ、そうなんだ。でも、ここまで鍛えてるのすごいよね。ちょっと触ってみてもいい?」

そこまでバキバキというわけではないにしても、腹筋は六つに分かれて浮き出ていて、さっきから手を伸ばしたくてうずうずしていた。

力こぶを見せられたら誰だって触りたくなるし、可能であればぶらさがりたくもなる。あれと一緒だ。
笑顔で見上げた私に、悠介はやや戸惑った様子で顔をしかめた。

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