契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「触るって……おまえ、さっきまで裸がどうのって騒いでたくせに」
「だって、よくよく見たらすごかったからこんな機会そうそうないし、と思って。ダメ?」
「別にダメだとは言ってない。……触りたいなら勝手にしろ」
顔を背けた悠介からお許しが出たので、ゆっくりと手を伸ばし肌に直接触れる。
とくに力を入れているわけではないから、カチカチではないけれど、私のお腹とは触感がまったく違っていた。
ペタペタと両手で触っていると、皮膚の下にしっかりと筋肉の存在を感じ、なんだか感動する。
こういうスタイルをキープするだけでも大変なはずだ。
鍛えられた体が、これまでの悠介の努力を表しているように思え「頑張ったんだね」という言葉が自然と口からこぼれていた。
きっと、その思いが手つきにも表れていたのだろう。
慈しむように、いい子いい子とするみたいに腹筋を撫でる私の手を悠介がそれぞれ掴んで止める。
「あまりベタベタ触るな」
その声に怒りの感情は含まれていなかったけれど、さすがにやりすぎたかもしれないとハッとする。
「あ、ごめんね。でも、ありがとう」
折っていた腰を伸ばし、悠介を見上げてお礼を言う。
悠介は、返事はせずに私をじっと見下ろしていた。両手がそれぞれ掴まれたままなので、なんとなく落ち着かないでいると、そのうちに悠介が「……濡れてる」とつぶやいたので、そこで自分が雨に降られたことを思い出す。
全身しっとりしているんだった。