契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける
「俺は、無理して笑われるよりも素直に打ち明けてくれた方が嬉しい」
「別に無理したわけじゃ……」
「バイトしていた頃から、柚希が落ち込むとなんとなく横顔でわかるんだよ。別に決定打があるわけじゃない。それでも、なぜかすぐにわかる」
「……そうなんだ。……そっか」
きっと悠介は人の機微に敏感なのかもしれない。
そんな優しい人が弁護してくれたら、依頼する側だって心強いだろう。
「悠介、私がバイトしていた頃から弁護士になるための勉強頑張ってたでしょ。それを思い出して……きっとすごく頑張ってとった弁護士資格なのに、私のくだらないお家騒動に使わせちゃったんだなって思ったら、ちょっと反省っていうか」
運転する悠介の横顔を見ながら続ける。
「夏美さんが、悠介は普段は企業の顧問弁護士としての仕事がほとんどだって言ってた。よくわからないけど、今回のケースって悠介が普段している仕事の中には出てこないような案件なんじゃないかなって。だとしたら、勉強してくれたのかなって」
ただでさえ忙しいのに、私のせいで仕事を増やしたんじゃないだろうか。
そこが心配で言うと、悠介は少し黙ったあと口を開く。
「おまえの言う通り、普段の仕事内容とは違うから、今回同行するにあたって多少は調べた。不安があると態度に現れるし、なめられたら負けだからな」
「……そっか」
「でも、詳しくないことを調べるのは当たり前のことだし、それを無駄だとも負担だとも思わない。だから柚希もつまらないことを気にしてらしくない顔するな」
悠介が強気に言い切る。
私を励まそうとしてくれているのが言葉や声から伝わってきて、その優しさに自然と笑みがこぼれた。
「うん。ありがとう」
「ほら、ついた。ここが姉さんのデザインしたホテルだ」
「うわー……すごいおしゃれだね」