契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


遠目からも見えていた通り、深い色の針葉樹を抜けていくとレンガ調の建物が全貌を現す。黒い枠の出窓に、アイボリーのレンガの外壁。三角の屋根。

欧風とアンティーク調が混ざった雰囲気が可愛くて、これは女性に人気が出るはずだと納得した。

すごいすごいと感心している間に、車がホテルに到着する。
地下の駐車場に止めてからエレベーターで一階のフロントに上がると、夏美さんの言っていた通り、手続きなしで部屋に通された。

ホテルのスタッフというよりは、エステ店スタッフや美容部員のような制服に身を包んだ女性がにこやかな笑顔を浮かべ案内してくれる。

「オーナーから話は聞いております。些細なことでも、どうぞなんなりとお申し付けくださいませ」

夕飯は二階のレストランで用意していることや、お風呂は一階で二十四時間利用可能なこと、エステやマッサージの用意もあるからぜひとも利用してほしいと、ひと通りの説明を終えた女性が「それではごゆっくりどうぞ」と下がったところで、部屋を見渡し息をついた。

アイボリー色の絨毯には、ワインレッドの色でガーベラのような花柄が入っていて、その上に置かれたテーブルの天板は、まで大木をそのまま輪切りにしたようなものがいくつか連なった、デザイン性の高いものだった。

L字型のオフホワイトのソファベットに置いてあるクッションは、紫色と深緑色。

部屋の奥、突き当りの壁は一面ガラス張りになっていて、その向こうには丸石の埋め込まれた壁があり、滝のように薄く水が落ちていた。

悠介と暮らしている部屋も豪華で素敵だけれど、夏美さんのホテルもオシャレでとても素敵だ。
照明の使い方も工夫されていて、雰囲気がいい。

こんな部屋に泊まったら、たしかにタオルやバスローブといった衣服だけでなく、家具も欲しくなるかもしれない。


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