どうも、噂の悪女でございます
 国王夫妻は困惑している様子だったが、既に婚約破棄は多くの貴族令嬢・令息が見ている前で宣言してしまったし、聖女の力もメアリーに移っている。今さら引き返すことは現実的ではない。

『話はわかりました』

 その瞬間、メアリーは己の勝ちを確固たるものにしたと内心でほくそ笑んだ。

「ちょっと美人だからって、いい気になっているからこういう目に遭うのよ。なんの努力もせずに王太子妃になれると思っていたんでしょうけど、いい気味」

 メアリーにとって、マーガレットは目障りとしかいいようがない人間だった。

 メアリーの実家であるリットン男爵家は石炭事業で成功した成金貴族で、爵位を金で買った平民上がりだ。そして、メアリーが王立学園に入学したのが、ふたりの出会いだった。

 いつも澄ました顔をしてお高くとまっていて、出会った当初から気に入らなかった。
 極稀に話しかけられたと思えば『図書館では声を小さくしてくださいませんか?』とか『廊下は走らないでくださいませ』とか、小言ばかり。

 挙げ句の果てに、イアン王子と親しくしていたメアリーに『あまり王太子殿下に馴れ馴れしくするとあなたの評価に関わる可能性があるから気を付けてくださいませ』と言ってきた。
 王太子であるイアン王子自身が気軽に接してくれていいと言っているのに!
  
 さらに、マーガレットが定期的に友人達を呼んでお茶会を開催していると聞いて『わたくしも行ってみたいです』と伝えたのに、『ちょっとこれは、特別な会なの。ごめんなさい』とはっきりと断られた。

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