どうも、噂の悪女でございます
「メアリー様。お手を」

 マーガレットは片手を差し出し、メアリーに手を出すように促す。手を差し出しながらメアリーは勝ち誇ったような顔をしたが、マーガレットはそれに気付かないふりをしメアリーの手を握る。
 握りあった手が鈍い光を発し、やがてメアリーの手の甲に淡い花の紋章が浮かび上がった。

「メアリー様に聖なる力が移動しました」

 マーガレットは表情を変えずに淡々とそう告げる。

「本当だわ。見て、イアン様! 私に聖紋があります」

 メアリーが自分の手を見て、はしゃいだようにイアン王子に語りかける。
 
 男爵令嬢が王太子の名前を直接呼ぶなど、不敬極まりない。
 けれど、最早それを注意する気すら起きなかった。

 ──だって、もうふたりとも自分には関係ない人達だから。

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