どうも、噂の悪女でございます
どういう反応をすればいいかわからずに凍り付く学生達の合間を抜け、マーガレットは大広間を立ち去る。そのとき、「マーガレット!」と呼びかける声がした。
「あら、ダレン様」
駆け寄ってきたのは、黒髪に透き通るような青い瞳、すっと通った高い鼻梁の男性だ。彼はヘイルズ公爵家の令息で、イアン王子の側近を務めている。
その生い立ちは少々特殊で本来であれば彼は第二王子だが、跡取りのいないヘイルズ公爵家に養子に出されてこれまでイアン王子を陰で支えてきた。
「ダレン様が色々と尽力してくださっていたのに、このような結果になり申し訳ございません」
マーガレットは頭を下げる。
思えば、あの王子でもなんとかマーガレットがここまでやってこられたのは、ダレンが陰で色々と根回ししてイアン王子をハンドリングしてくれていたからだった。その努力を無に帰すような結果になり、申し訳なくなる。
「いや、俺のことはいい。きみこそ、今まで大変だったね」
「いえ、大丈夫です。なんだか、すっきりしました」
「ははっ」
ダレンは少し口角を上げたマーガレットを見て、ほっとしたように笑みを見せる。