契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました～強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する～

　新居のリビングルームで伊織さんが帰ってくるのを待ちながら、ホットミルクを飲む。
　暖炉の薪がパチパチと小さな音を立てて爆ぜた。心が落ち着く音だ。
　突如始まった同居生活は、怖いくらい至れり尽くせりだった。
　掃除は家事代行サービスの人が週に二、三回来て、昼間のうちに綺麗にしておいてくれる。洗濯物もそのとき持っていって、丁寧にたたまれた状態で戻ってくる。
　料理はなんと、伊織さん本人が作ってくれた。
　わたしが作るつもりでいたのでびっくりしたのだけれど、もともと料理をするのが好きだったみたい。

『高校生のころ、夜中に腹が減ってしょうがなくて作りはじめたんだ。それ以来、なんとなく続いている。趣味みたいなものだな』

　伊織さんはそう言っていた。
　お母さまが亡くなってからは、家政婦さんが家事をしていた。でも、成長期の男子の食欲はすごい。用意された食事では足りなかったらしい。