契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました～強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する～

　ただ、そういう理由以外にもきっと、電子レンジであたためたものではなくて作り立ての料理が食べたいという気持ちもあったのだろう。どんなに強い心の持ち主だったとしても、まだ十代の子どもだもの。さみしさはあったに違いない。

「結菜、ただいま」
「あ、お帰りなさい」

　ぼんやりしていたら、伊織さんが帰ってきた。
　わたしがソファーから立ち上がろうとすると制止して、おでこに軽くキスをする。
　このキスも、いつの間にか日常になってしまった。

「お出迎えできなくてごめんなさい」
「いいんだ。結菜がこの家にいてくれるだけでうれしいよ」
「そんな……」
「着替えたらすぐ飯にするから、もう少しゆっくりしていて」
「あ、はい、いつもごめんなさい」

　今度は鼻の頭にキスをして、伊織さんは自室に戻っていった。
　わたしたちはいずれ結婚する予定だけど、今は別々の部屋で寝起きしている。
　この家に来て最初の夜、急な婚約に戸惑うわたしの思いに気づかれたのか、伊織さんから『一緒の部屋にするのは籍を入れてからにしよう』と軽く告げられた。