契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 気持ちが追いつかなくて、そのときはありがたかったけど、今は少し不安もある。
 家族の情は芽生えてきても、女性としては魅力が足りないのかもしれない。たとえ彼に求められても今は応えられないし、やっぱり契約結婚だし……。
 またぼうっとしていたら、ラフな服装に着替えた伊織さんが呼びに来た。シンプルな黒のハーフエプロンがとても似合っている。

「夕食ができたよ。ダイニングに来られる?」

 伊織さんと手をつないでダイニングルームに行くと、テーブルには家庭的な和食が並んでいた。

「ありがとうございます。疲れてるのにごめんなさい」
「いや、常備菜もあるから大したことはないよ」
「おいしそう……」

 きんぴらごぼうに、ほうれん草の白和え。ブロッコリーときのこの蒸し焼きは食べやすい小鉢で。メインはレバニラ炒め、デザートはいちごだ。
 わたし、ひとり暮らしをしていたときは、もっと適当だったわ。ちょっと反省。

「胎児の成長に必要な栄養素を意識してみたんだ。でも、無理せず食べられそうなものだけ、食べればいいから」
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