契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 頭上から深い響きを秘めた声が降ってきた。

「結菜、ありがとう。俺たちの子どもを宿してくれて……この子を生もうと決意してくれて」
「伊織さん」

 なんでそんな泣かせるようなことを言うんだろう。涙が止まらなくなってしまう。
 彼の胸は広くて、とてもあたたかい。
 ずっと、この場所にいたい。
 分不相応な望みが込み上げてきて、のどの奥をふさいだ。



  * * *



 それから伊織さんは過保護といってもいいほど、優しくなった。これまでも十分気を遣われていたけれど、それ以上に甘やかしてくる。
 会社の送り迎えは今までどおりだけど、わたしが車から降りるときに心配を隠さなくなった。夕方も必ず一緒に帰る。
 仕事は家に持ち帰っているらしい。無理をしないでほしいけど、会社にいても心配で仕事が手につかないと言われて、この状況を受け入れている。
 家の中ではインプリンティングされたひよこのように、わたしのあとを着いてくる。家庭内ストーカーみたい。
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