契約結婚のはずなのに、予定外の懐妊をしたら極甘に執着されました~強引な鉄道王は身ごもり妻を溺愛する~
 体を冷やすなとか栄養を取れとか口うるさいところは、ストーカーというよりお母さんっぽい。ストーカーなのか保護者なのか、はたまたひよこなのか、ときどき彼の真剣さがちょっとおかしくて思わず笑ってしまう。
 一方で、休日に出かけるときは、完璧な紳士のエスコート。
 歩くときは必ず彼が車道側、荷物を持つもの彼だし、決してわたしが転んだりしないように腕を貸してくれる。

「ひとりじゃなにもできない、だめな人間になってしまいそう」

 ぽかぽかした日差しが差し込むサンルームで、わたしはため息をついた。独り言は、たくさん並べられた観葉植物に吸い込まれていく。
 自宅の南側には広いサンルームがあって、庭とつながって見えるような造りになっていた。
 緑の間には色とりどりの花の鉢も置かれており、まるで春のようなサンルームと、静かな冬の庭との対比も美しい。
 籐のカウチに体を預けて寛いでいたら、伊織さんがココアを持ってきてくれた。

「寒くないか? ひざ掛けを持ってこようか」
「ううん、今は大丈夫。冷えてきたら、中に入るから」
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